イギリスの居酒屋 Pubs, Public House

Luke

こんにちは、イギリス生まれ・東京在住、英語教師で作家のLukeです。今週、僕が書いたオノマトペ(擬態語・語音後)についての本 が出版されました。是非チェックしてみて下さい!

今日はイギリスのパブの名前と看板についての話をします。以前の記事で、
どうして「the」が居酒屋の名前に付いているのかという質問がいくつかありました。
この質問に対して、この記事を書きます。

イギリスの居酒屋は通常「pub」と呼ばれています。これは、「public house」という言葉の略語です。
たまに「inn」という言葉も使われています。実は「inn」は宿という意味です。
昔のイギリスのパブは宿と居酒屋を組み合わせた物だったからです。旅行をしている人や巡礼者がパブを簡単に見つけられるように、
パブの外には、大きい看板が掲げられていました。その時代は、字が読める人はめったにいなかったから、
大事なのは名前ではなくてパブの絵や象徴となるものでした。

例えば、看板に王様の頭が描いてあったら、パブの名前が「The King’s Head」だと皆が分かっていました。
イギリスでは通常店の名前は持ち主の名前に由来しているけど、パブの名前はパブの象徴や絵に由来しているから、
おとぎ話や絵本のタイトルのような名前が多いのです。

例えば

The Red Dragon (赤い龍)

The King’s Head (王様の頭)

The Plough (鋤 すき)

こういう理由から、パブの名前の前には、「the」が通常付いています。つまり、名前が持ち主の名前ではなくて、
本のタイトルの構成だからこそ、定冠詞が必要なのです。

ところで、おとぎ話の名前の前に「the」がよく付いていることは、
皆さんは知っているのでしょうか? 例えば、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの有名なおとぎ話は:

The Little Maiden

The Princess and the Pea

The Ugly Duckling

おとぎ話は英語で, “fairy tale” と言います。 蛇足の蛇足だけど、 英語で「fairy tale」は形容詞で使うと、
意味は「too good to be true ― 信じられないぐらい良い 」です。

話を元に戻すと、現在のイギリスでも、普通この伝統的な手描きの看板がパブの外で見られます。
パブの看板は多くの場合紋章学に由来していました。例えば、全てのパブは看板を掲げなければならないという法律を作った英国のリチャード二世の紋章は白い雄鹿でした。 ですので、白い雄鹿がある看板はとても人気があるのです。そのパブの名前は通常「The White Hart」です。

駄洒落のパブの名前も人気があります。次のパブの名前の落ちが分かるかどうか試してみてください!

The Dew Drop Inn というアイルランドにあるパブ - 意味は「露の滴の宿」でも、読み上げると、
「do drop in」という表現のように聞こえます。 「Do drop in!」の意味は「是非ちょっと立ち寄って下さい!」

The Office ― この名前はとても役に立ちます。例えば、或るおじさんがパブで飲んでいる時に、奥さんが電話してきて、
“あなた、どこにいますか”と聞かれたら、おじさんは嘘をつかずに「I’m in The Office right now.」と応えます。

最後に、次の2つのパブは英語でよく使われいている表現を生み出しました。The CockとThe Bullは2つのバッキンガムシャー州にある2つのパブです。
そして、この2つのパブは激しいライバルで、熱心な顧客はよく自分の優れた能力についての作り話をしました。
時間とともに、この嘘話は「cock and bull stories」と言われるようになってきました。ですので、
今では「cock and bull story」という意味は「信じがたい話」や「眉唾物」という意味で用いられます。

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    記事を書いたLukeについて

    英語の教師と作家。父はイギリス人、母はアメリカ人。イギリス生まれ、13歳でアメリカへ。卒業後はワシントンDCで記者。現在東京に在住。著書に『この英語、どう違う?』(KADOKAWA)、『とりあえずは英語でなんと言う?』 (大和書房)、など。NHK基礎英語1と婦人公論の連載。