19世紀の英語のスラング

Luke

こんにちは、イギリス生まれ・東京在住、英語教師で作家のLukeです。今週、僕が書いたオノマトペ(擬態語・語音後)についての本 が出版されました。是非チェックしてみて下さい!

この間、ソア橋というシャーロック・ホームズの短編小説を読んでいました。この短編小説は探偵小説上の「密室殺人」というジャンルにおける好例です。容疑者の一人は金鉱王というあだ名があるアメリカの上議員です。そして、彼はホームズとの会話で、boomingという単語を使いました。僕は、この単語の使い方に対して違和感を感じたのです。それでこれが19世紀のスラングだと気付いたのでした。大昔のスラングについて考えるのは面白いなと思って、これ以外に19世紀のスラングの中で現在も使われている単語がないか探しました。

ディケンズが初めて書いたボズのスケッチーには、もう一つの19世紀のスラングがあります。それはput the kibosh(カイボッシュ) onです。このスラングは現在も使われ、「終わらせる」や「おじゃんにする」という意味になります。計画がダメになったときにこのフレーズをよく使います。例えば、

The accusations of infidelity put the kibosh on his career as a politician.
彼の不貞に対する非難が彼の政治家としての経歴を終わらせた。

もう一つの19世紀のスラングはboshです。boshは現在も時々使われ、トルコ語に由来します。「馬鹿げたこと」という意味になります。boshはJ.J. Morierが書いたAyesha(アイシャ)という小説で人気になったようです。
現在スラングは映画や音楽を通して普及しますが、19世紀には、多くのスラングは小説を通して普及したようです。
では、ホームズの短編小説に出てきた、boomingはどういう意味でしょうか。もともとboomは「鳴り響く」という自動詞でしたが、19世紀に入りスラングとして、自動詞の「にわかに景気づく、人気が出る」、他動詞の「(広告などで)~の人気をあおる、~を宣伝する」という意味を持ちました。現在は、通常、自動詞のboomは「にわかに景気づく、人気が出る」という意味で一般的に使われています。しかし、他動詞のboomはまだにスラングとして使われています。
短編小説では、アメリカの上議員はホームズに以下のように言います。

If you pull this off every paper in England and America will be booming you. You’ll be the talk of the two continents.
もし君がこの事件を上手く解決すれば、イギリスとアメリカのあらゆる新聞が君の事を宣伝するだろう。君はニ大陸の噂になるぞ。「Copyright © Toko&Ton 2007-2008 」

Thank you. Mr. Gibson, I do not think that I am in need of booming.
ありがとうございます、ギブソンさん。私は宣伝が必要とは思っていません。

この返事から察するに、ホームズはboomingが滑稽なアメリカの単語だと思っているでしょう。
他動詞のboomは僕がいつも使っている辞書には載っていませんでしたが、Merriam Websterには、“to cause a rapid growth or increase of”(急速な成長や増加を引き起こすこと)という定義がありました。

3 件のコメント

  • どの言語も時間とともに使い方が少しずつ変わるのは興味深いですね。
    accusations(非難)が「避難」になっています。

  • Every paper in England and America will be booming you.
    イギリスとアメリカのあらゆる新聞が君のことを宣伝するだろう。
    上の文章の「宣伝」という言葉は、「喧伝(けんでん)」にした方がいいような気がします。ただし、「宣伝」という言葉でも決して問題はないと思います。

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    記事を書いたLukeについて

    英語の教師と作家。父はイギリス人、母はアメリカ人。イギリス生まれ、13歳でアメリカへ。卒業後はワシントンDCで記者。現在東京に在住。著書に『この英語、どう違う?』(KADOKAWA)、『とりあえずは英語でなんと言う?』 (大和書房)、など。NHK基礎英語1と婦人公論の連載。