チップの相場と渡し方 アメリカ、その他の英語圏でのチップ事情

Luke

こんにちは、イギリス生まれ・東京在住、英語教師で作家のLukeです。今週、僕が書いたオノマトペ(擬態語・語音後)についての本 が出版されました。是非チェックしてみて下さい!

僕が日本に来たばかりの頃の話ですが、レストランでお会計が終わりテーブルにチップを置いてお店を出ると、ウエイターが走って僕を追いかけてきました。彼は僕にそのお金を返そうとしましたが、僕は日本語が分からず彼は英語が分からなかったので、混乱した僕は彼にお金を握らせ走って逃げてしまいました。今思い出すととても恥ずかしいですが、日本にチップの習慣がないと分かるまでは、何度か同じようなことがありました。イギリスとアメリカで育った僕にとってチップは生活の一部だったので、日本では必要ないと知った時はかなり衝撃的だったのを覚えています。

逆に皆さんの中にも、海外旅行などに行く際にチップについて不安を抱いた事のある方や、海外で困った経験をした方もいるのではないでしょうか。チップは複雑なので、現地で生活する人にとっても難しい場合があります。何が複雑かというと、まずチップを支払う必要がある職業とそうでない職業があります。また、職種によって会計の何パーセントのチップを支払うかが異なります。そして、国によってもチップの決まりが少しずつ違ってくるのです。
チップの習慣がある国では、職種によっては収入の大半がチップという人も少なくありません。たとえば、通常アメリカの最低賃金は7.25ドルぐらいですが、チップを貰う職業の場合はチップを貰うというのが前提なので、最低賃金は2.13ドルになります。ですので、そのような職業の人たちは、チップを忘れたり間違って少なく支払うお客さんがいたら困ってしまいます。僕は高校生の頃ウエイターのアルバイトをしていましたが、チップを多く貰いたかったので良いサービスを心がけていました。
現在、ヨーロッパではサービスチャージの場合が多いので、チップを会計と別に支払うのではなく、既に会計にチップの料金が含まれています。しかしアメリカでは、サービスチャージではなくチップを別で支払う場合の方が多いです。チップのだいたいの相場は決まっていますが、良い接客だと思えば多くチップを支払うことも珍しくないので、多くのアメリカ人にとって、チップは働く人々の意欲やサービス向上に繋がるという考え方があるからだと思います。
今回は、各国のチップとサービスチャージ事情(表1)と、アメリカの職種別のチップ相場(表2)をまとめてみました。

各国のチップとサービスチャージ事情(表1)

イギリス 10-15% 通常の場合、パブではチップが必要ないがレストランなどではチップを支払う
アメリカ 10-20% 美容師、タクシー運転手、ウエイターその他多くの職業の人にチップを支払う(表2参照)
グアム 10-20% アメリカと同様(表2参照)
ハワイ 10-20% 同上
日本、中国、韓国 チップの習慣がない
オーストラリア 10-15% 昔はチップの習慣がなかったが20年前頃から徐々に定着
メキシコ 10-15% アメリカより多くの職業の人にチップを支払う傾向にある
フランス 10%
インド 15%
タイ 15%
カナダ 15-20% アメリカとほぼ同様(表2参照)
イタリア 10% チップの習慣はないが、レストランではサービスチャージになるのでチップは会計に含まれている
ドイツ 10-15%
ニュージーランド チップをしない サビースチャージである

アメリカの職種別のチップ相場(表2)

レストラン 10-15%
バイキング 10%
出前 10-15%
バーテンダー 1杯だけの場合1ドル-2ドル 多く注文した場合10-15%
ホテルの清掃員 2-5ドル(封筒に入れて置いておく場合が多い)
ネイリスト、美容師、エステ、彫り師 15-20%
お手洗いのアテンダント 0.50ドル-3ドル
テイクアウト チップを支払う必要はない
タクシー運転手 15-20%
コンシェルジュ「concierge」 質問などの対応に対してはチップを支払わなくて良いが、チケットやレストランの予約を頼んだ場合は5-10ドル
ホテルのベルボーイ、ベルガール 「bellhop」 ひとつめの荷物は2ドルでその後は荷物ひとつにつき1ドルずつ支払う
ドアマン「doorman/doorwoman」 ドアを開けてくれた際にThank youを言うだけで良い タクシーを呼んで貰った場合1ドル
駐車サービス 「parking valet」 2-5ドル
空港や駅で荷物を運ぶスタッフ「porter」 1つめの荷物は2ドル、その後は荷物1つにつき1ドルずつ支払う
空港などでの車いすの手伝い 3-5ドル
靴磨き「shoe shiner」 2-3ドル

チップを支払う職業で僕が思いつくのはこのくらいなので、もし他にも知っている方がいたら是非教えて下さい。

チップの渡し方

日本では旅館や結婚式などで渡す、チップに似た「心付け」という習慣がありますね。そのような場合日本では現金を袋などに入れると思いますが、アメリカやイギリスではほとんどの場合「thank you」などとお礼を言って現金をそのまま渡します。それなので、たまに日本人がタクシーを降りる際に言う「釣りはいらないよ」の方がチップに近いかもしれませんね。
チップの習慣がある国にいると、「この人にはチップをいくら支払うのが適切だろう」や「この職業の人にはチップを支払うんだっけ?」などの悩みが毎日のようにあります。日本に来た頃は戸惑いましたが、今ではチップの習慣がない日本に感謝しています。
最後に、日本語では「チップ」という発音ですが、それだとアメリカ人にはポテトチップ、イギリス人にはフライドポテトと勘違いされてしまうかもしれないので、英語で話す場合は「チ」ではなく ti を発音するように意識して下さいね。

10 件のコメント

  • いつも楽しく拝見しています。
    先月までNYにいましたので、アメリカのレストランでのチップについてコメントさせていただきます。
    以前は18%が普通でしたが、最近では20%が普通になってきているようです。
    NYに関しては、10-15%という目安は当てはまらず、逆に10%はひどい接客のときの目安になると思うので、コメントさせていただきました。
    これからも更新楽しみにしています。

  • カナダ在住です。カナダでは最低12%~15%近く払っているのでアメリカでも同様にしていましたが、水準は20%なんですね!私の行動範囲がカナダ~アメリカの西海岸なので地域によって違うんでしょうか?アメリカはカナダより基本賃金が低いからチップがより多く必要なのかもしれないですね。(カナダの最低賃金は$10です。)習慣になってからはあまり考えずに払っていました

    • >Mickey Canadaさん
      私のコメントがちょっと言葉足らずだったので、追記させてください。
      18-20%はNYのみだと思います。
      アメリカでも、州が違うとレストランでのチップは15%くらいで良かったところもあったと記憶します。
      カナダは最低賃金でも$10あるんですね!
      アメリカでは、最近チップは税金含めたトータルの金額で払うか、税金を抜いて実際の食事代で払うかの議論がネット上で見られ、以前までは税抜きだったのが、ここ数年では税込みのトータルに対してチップを払うというのが多数のようです。

  • いつも勉強させて頂いています。
    日本では、旅館で心づけが行われますが、封筒を持ち歩いてる人は、
    なかなかいませんので、お札を4つ折りにしてティッシュやメモ用紙
    などで、包装することが多いです。また払わなくても構わない風潮に
    なりつつあります。
    そもそも日本では、チップ代を抜いた給料体系がないので。
    タクシーも最近はあまり払わないのが、習慣となりつつあります。
    1メータの時やお釣りが小銭の場合ぐらいではないでしょうか?
    私が子供の頃に教わったのは、喫茶店でコーヒー1杯分や煙草1箱分の
    値段が相場と聞きましたので、現在だと400円~500円程度でしょうか?
    また昔は、病院でも手術を受ける場合などには、支払うことが多かった
    のですが、最近は禁止している病院が多いです。
    逆に現金を受け取る医者は良くない医者と見られます。
    本当にお世話になった医者に対しては、現金ではなく、他の看護婦さん
    などにも分けられる、菓子折り程度を渡すことはありますが強制では
    ありません。退院時に気持ちとして皆さんで、どうぞって感じです。

  • very interesting!
    アメリカで、ホテルに泊まったら毎日チップを置くのは日本人だけで、ネイティヴは2~3日に1回ぐらいというのを聞いたことがあるのですが、実際アメリカ人はどうしてるんですか?
    イタリア人の友達はアメリカでもホテルの部屋にチップを置いたことなんてないと言っていましたがそれはrudeですよね笑
    あと、5年ぐらい前にオーストラリアにいた時はチップはほぼ不要でしたし、レストランの最低賃金も14ドルぐらいでした。
    レジにチップ入れがあって、入れたい人は入れてねって感じでした。

  • Lukeさん こんにちは。
    このサイトを見つけて大声で「これだ!」と叫んでしまいました。イギリスに10年住んで帰って来ました。ある程度問題なく話せますが、細かいニュアンスで「なんていうんだろ?」と思うことがあります。
    子供たちの英語力を保つためにも、このサイトで勉強させてもらいます。
    これからも興味深い話、心待ちにしております。

  • ~チップについて~
    もう何年も前にオールトラリア人から聞いた話ですが、オーストラリアでも2000年のシドニーオリンピックの前後にかけて、シドニーとその周辺で20~30代の世代でチップを渡すようになったようですが、年配者の間では評判が悪かったそうです。
    今は’なつ’さんが言うようにチップはほぼ不要ではないでしょうか。
    チップが欲しいところでは、レジにチップ入れが置いてあるところが確かにありますね。
    ニュージーランドでは日本と同様にチップの習慣がないと、ニュージーランド人が言っていました。
    またアメリカでもホテルに泊まった時に毎日チップを置く人は少数派で、殆んど人は最後の日にチップを机またはテーブルの上に置くか、1週間以上の長期の滞在の場合は2~3日に一度だと、ホテルのハウス・キーピングの人が言っていました。
    ガイドブックに書いてあるのは建て前で、実際は少し違うというのが現実のようです。

  • はじめまして!ロス出身の夫を持つ東京在住の者です。ロスにはたびたびいきますが、夫も含め、レストランでは友人達は20%を基準に増減していました。感覚的に、ロス、NY、シカゴなどの大都市では20%のチップが必要だとおもいます。ウェイターさんたち、ほんとに最低賃金ですからね。気をつけたいです。

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    記事を書いたLukeについて

    英語の教師と作家。父はイギリス人、母はアメリカ人。イギリス生まれ、13歳でアメリカへ。卒業後はワシントンDCで記者。現在東京に在住。著書に『この英語、どう違う?』(KADOKAWA)、『とりあえずは英語でなんと言う?』 (大和書房)、など。NHK基礎英語1と婦人公論の連載。