邦題がカタカナなのに原題と違う洋画 ー パート2

Luke

こんにちは、イギリス生まれ・東京在住、英語教師で作家のLukeです。今週、僕が書いたオノマトペ(擬態語・語音後)についての本 が出版されました。是非チェックしてみて下さい!

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前回のパート1では、原題と邦題が似ているものを紹介しましたが、今回は原題と邦題が全く違うものを集めてみました。それなので、ネイティブに邦題を英語の発音で言ってみても、何の映画か分からないであろうものが大半を占めています。英語(カタカナ)の邦題だからといって油断してはいけませんね。皆さん、好きな映画があったら是非とも原題を覚えてみて下さい。

ゴリラ: Raw Deal

この邦題は僕的にツボだったので最初に紹介します 。アーノルド・シュワルツェネッガー演じる元FBIの警察官が、マフィアに立ち向かうこのアクション映画の原題「Raw Deal」は、「不当な扱い」という意味です。そして、ゴリラが出ないのに「ゴリラ」になってしまった理由は、意外なところにありました。同年にシルヴェスター・スタローンのアクション映画「コブラ」が公開されていたので、こちらは「ゴリラ」になったようです。確かに、ゴリラとアーノルド・シュワルツェネッガーの力強さや筋肉には通じるものがあるかもしれませんが、「Raw Deal」が日本では「ゴリラ」というタイトルだと知ったらアメリカ人もびっくりでしょう。かの有名な坂本九さんの曲「上を向いて歩こう」が、アメリカで「Sukiyaki」として親しまれているのを思い出しました。

フェイク: Donnie Brasco

こちらはアル・パチーノとジョニー・デップが共演した映画です。FBI潜入捜査官ジョー・ピストーネの実話に基づく映画で、彼は原題でもある「Donnie Brasco (ドニー・ブラスコ)」という偽名でマフィアの一員となり6年間潜入捜査をしました。それにちなんで、邦題は「偽物」を意味する「フェイク(fake)」になったのでしょう。

フィクサー:Michael Clayton

ジョージ・クルーニーが主演を務めた映画ですが、原題にもなっている Michael Clayton は主人公の名前です。「マイケル・クレイトン」という邦題だったら意味が分からないと思いますが、「フィクサー( fixer)」もあまり日本人にはなじみがなさそうな英語ですね。 fixer は、「揉み消し屋」という意味で使われています。

ザ・エージェント:Jerry Maguire

トムクルーズ演じる、有名なスポーツエージェントのジェリー・マグワイア(Jerry Maguire)が主人公の映画です。これは原題も邦題も至ってシンプルですね。

アウトロー:Jack Reacher

記憶に新しいこの映画ですが、トム・クルーズ演じるジャック・リーチャー(Jack Reacher)という主人公の名前がまたもや原題です。いい加減、アメリカ人のネーミングセンスを疑いますね。邦題の「アウトロー(outlaw)」は、法や社会秩序を無視する、すなわち「無法者」という意味です。日本でのキャッチフレーズは、「彼の名前はジャック・リーチャー。世界で最も危険な流れ者(アウトロー)」だったようです。

ジャッキー・コーガン:Killing Them Softly

こちらの原題「 Killing Them Softly」は、「 警告なしで痛みも感じさせないほど素早く殺す」という意味ですが、ブラット・ピット演じる主人公の名前「ジャッキー・コーガン」が邦題になっています。原題が人名で邦題を変えるパターンはいくつか紹介しましたが、邦題を人名にしたこのパターンは珍しいでしょう。

アンドリューNDR114:Bicentennial Man

ロビン・ウィリアムズ演じる、アンドロイドのアンドリューことNDR114についての映画です。2を意味する bi と、100を意味する centennial で出来た bicentennial は、「200年間」という意味になります。原案であるアイザック・アシモフのSF小説「バイセンテニアル・マン:The Bicentennial Man」の初訳時の題名は「二百周年を迎えた男」だったそうです。

プリティ・ブライド :Runaway Bride

こちらは、ジュリア・ロバーツとリチャード・ギアが「プリティー・ウーマン」以来の共演を果たしたので、プリティー・ウーマンに似た邦題を付けたようです。原題の「Runaway Bride 」は「逃げる花嫁」という意味ですが、邦題の「プリティー・ブライド(Pretty Bride)」、つまり「綺麗な花嫁」では、大分意味が違ってきますね。

スペル: Drag Me to Hell

サム・ライミ監督のこのホラー映画は、「呪文」を意味する「スペル(spell)」が邦題で、原題の「Drag Me to Hell 」は「私を地獄まで引っ張って」のような意味になります。「呪文」は英語で spell だと知らない人も多くいると思うので、吹き替えで見たら最後まで「スペル」という邦題の意味が分からない人もいるかもしれませんね。

ブラックサイト:Untraceable

こちらはR-15指定のサスペンス映画なのですが、殺人の実況中継をするサイトにちなんで「ブラックサイト」という邦題が付けられたのでしょう。原題の「untraceable」は「追跡できない」という意味です。

ネゴシエーター: Metro

エディ・マーフィー演じる主人公の刑事は、交渉人、つまり邦題通り「ネゴシエイター( negotiator)」なのですが、肝心の原題は「地下鉄」を意味する「 Metro」です。この「ネゴシエーター: Metro」が公開された翌年、サミュエル・L・ジャクソンとケビン・スペイシー主演の「The Negotiator」という映画が公開されましたが、邦題は「交渉人」でした。混乱してしまいますね。

ベスト・キッド:The Karate Kid

1984年の映画「ベスト・キッド(The Karate Kid)」が、2010年にウィル・スミスの愛息ジェイデン・スミスとジャッキー・チェンの共演によってリメイクされ話題を呼びました。これに限っては、邦題より原題の方が日本人にとっても分かりやすいのではないでしょうか。しかし「空手キッズ」という邦題だったら人気が出なかったかもしれませんね。

インビジブル:The Hollow Man

邦題の「インビジブル(Invisible)」は、「目に見えない」という意味になります。この映画は、原案がH・G・ウェルズの小説「The Invisible Man」なので、邦題の「インビジブル」にも納得出来ますが、原題の「The Hollow Man」は「中身のない人」を意味します。ちなみに a hollow life は「無意味な人生」という意味です。

ハートブルー:Point Break

若きキアヌ・リーブス演じるエリートFBI捜査官ジョニー・ユタは、潜入捜査でサーファーになります。原題も邦題もサーフィンにちなんでいて、「Point Break」はサーフィン用語で「波が崩れるある一定の場所」になり、「ハートブルー」は海や空の青、青春、後悔など憂鬱で青色な感情を表している、邦題のための造語といった感じでしょう。

バタリアン:The Return of the Living Dead

こちらは、有名なゾンビ映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(Night of the Living Dead)」のパロディーとなっているホラー映画です。原題は「The Return of the Living Dead 」というように「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」に関係しているのにも関わらず、邦題は「大隊、大群」を意味する「バタリアン(Battalion)」です。しかし、昭和生まれの方は聞き覚えのある「オバタリアン」という流行語は、この映画「バタリアン」から生まれたようなので、この邦題はある意味大成功とも言えるでしょう。
いかがでしたか?カタカナのみの邦題でさえ、ここまで原題と意味が変わっているのですから、日本語が混ざっていたら更に面白いことになっているでしょう 。映画のヒットのために、日本人が観たくなるような邦題を付けるのは非常に難しそうですね。逆に日本の映画が英語圏で公開される場合はどうでしょうか。日本でおなじみのジブリ映画「千と千尋の神隠し」は、「Spirited Away」というタイトルで公開されました。spirit は「精霊」という意味になり、spirited away は動詞で、「魔法のように連れ去られた」という意味になるので、「神隠し」という言葉にとても近い感じはしますね。

8 件のコメント

  • 原題の意味まで詳しく説明されているので意味の違いがよくわかりました。
    全然違う意味になっている題も多いんですね。
    ランボーは制作側も気に入って原題も変更されうまくいった例の一つだとwikipediaで読みました。

  • 映画好きなのでIMDbでチェックしています。
    でも日本ではたまにローマ字で邦題を表記している時があって
    笑えます。

  • 映画ランボーは原題が「First Blood」だったものを邦題「ランボー」としてそれが逆輸入され以降「RAMBO」になったようですね
    他にも何かないでしょうか

  • 羊たちの沈黙:The Silence of the Lambs
    This is a rare examples of when they get’em right. Most of the times, I read Japanese titles and they make me go absolutely bonkers, like “why would you…” *clenching my fist*

  • Crying my eyes out, as I often do when I come here due to the powerful emotions your writing triggers in me and the tears that come every year at this time and throughout the rest of the year when an image of the towers passes before my eyes or other, darker, reminders of the day we were murdered by the thousands for islam. What an incredible post you've put together here. I am deeply honored to have my words included. Thank you so much. I will always reeeebmr.Nevmr Forget.

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    記事を書いたLukeについて

    英語の教師と作家。父はイギリス人、母はアメリカ人。イギリス生まれ、13歳でアメリカへ。卒業後はワシントンDCで記者。現在東京に在住。著書に『この英語、どう違う?』(KADOKAWA)、『とりあえずは英語でなんと言う?』 (大和書房)、など。NHK基礎英語1と婦人公論の連載。